教授レポート

Instructor Reports

地図から湖が消えるとき、
世界では何が起きているのだろうか?

写真提供元:サヘルの森

サハラ砂漠南縁部の東西に広がる広大な地域をサヘル地域という。大半の国々が最貧国で、降水量の少ない半乾燥地域である。かつては湿潤な時期もあったが、度々の干ばつに見舞われ、砂漠化が徐々に広がった。近年は、人為的な森林破壊や生態系の破壊の影響で砂漠化がますます進行している。

サヘル地域の中央部にチャド湖という湖がある。1960年代には琵琶湖の40倍以上の面積のある世界的にも大きな湖だった。ところが、20世紀後半のたび重なる干ばつ、周辺諸国の人口増加、大規模な農地開発が目的の無計画な灌漑等の影響で、約40年間で面積が20分の1に縮小してしまった。このままでは21世紀中に消滅してしまう恐れがある。

チャド湖周辺に住む人々にとって、湖の水資源は、生きていく上で必要不可欠なものである。湖の縮小に伴う深刻な水不足は、生活環境の悪化、食糧不足等の原因となり、大量の環境難民の発生を引き起こす。さらに、大量の環境難民が発生すると、部族間対立、民族問題など様々な紛争の火種にもなりかねない。なお、チャド湖の例に限らず、世界各地で環境の悪化が原因で様々な問題が引き起こされている。

国際情勢、経済問題、環境問題など、世界で日々起きている様々な問題に興味を持ち、理解することは、社会に出てからとても役に立つ。日頃から新聞やニュースなどに接していれば、視野を広げ、自分たちが置かれている現状について考えるきっかけにもなるはずだ。「このままでは地球が大変なことになる…」というような問題意識も学生時代に持って欲しい。

写真の解説:
サヘル地域の一角、マリ共和国北部にあるファギビンヌ湖の旧湖底。上流部での河川水利用の増大、さらに気候変動や周辺地域の砂漠化で、水路が砂に埋まるなどしてニジェール河からの流入水が減少し、湖が乾燥化した。天然林を形成しても乾燥化に歯止めがかからず、枯死する立木も珍しくない。

山中 康資 教授

大学で土木工学を学び、1997年3月に博士(工学)を取得。長年にわたり水工水理学の研究に勤しんできた。2001年4月、組織改編された国際関係学部に異動し、現在は環境問題、食糧問題、エネルギー問題、環境対策技術などのテーマを研究している。大学では、「地球環境と持続可能な開発」、「地球環境問題」、「数理の世界」、「科学思想史」、「情報処理I・II」など多彩な授業を受け持つ。

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このTopicsに関する講義

  • 環境倫理
  • 地球環境問題
  • 地球環境と持続可能な開発
  • 紛争研究
  • 国際環境法規 etc

美食家 フランス人もお好みの
“BENTO”、世界中で大ブーム。

日本の弁当は、今は「BENTO」としてフランス語をはじめ世界各国の辞書に記載されるようになっている。フランスでは、日本のJRとの協賛によりパリ・リヨン駅で「駅弁」を販売するという企画が持ち上がり、実際にスーパーなどでも「BENTO」が販売され、専門店に行列ができるなど人気を博した。フランスではもともと、2時間程ある昼休みにフルコースをしっかり食べるという食文化があったが、近年のグローバル化や経済不況などの影響を受けてこれが短時間化・簡略化されるとともに、日本の弁当文化が注目されるようになったという。

弁当に代表される日本の食文化は、可愛いデザインの弁当箱や美しい器に入れられた色とりどりのおかずやご飯というビジュアルの魅力をはじめ、素材を活かしたヘルシーな調理法、郷土料理に盛り込まれた伝統や地域環境の継承、そして食材に対する敬意などが高く評価される。広く日本食と呼ばれる食文化の中で、日本の伝統的な風俗を反映した和食は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。2015 年のノーベル賞授賞式でも、こうした日本の食文化の精神を採り入れた晩餐がふるまわれ、話題となった。

食文化に限らず、外国人が日本文化を受け入れる際に示す日本人とは異なった視点は、日本人にも逆輸入され、新たな気づきや発見をもたらすものだ。また、日本文化と外国文化という二元論に留まらず、フランス文化とドイツ文化など、外国文化にも多様性があることに気づけば、複数の外国文化を学ぶことでまた新たな発見があるに違いない。複数の視点から眺めることで、日頃見慣れているものからも新しい発見があり、そこに学びの喜びがあることを知ってほしい。

写真の解説:
弁当は、アニメやマンガから爆発的に広まったと言われている。フランスでは昼食を重んじる習慣があったが、景気の影響による節約志向により、手軽に楽しく健康的な食事をとれる弁当ブームに火がついた。日本の弁当箱も注目され、見た目の美しさや機能美が賞賛されている。

橋本 由紀子 准教授

研究分野は19世紀フランス文学・比較文学。主にフロベールの作品研究を行う。近年は学内及び他学部の外国語担当教員と連携してCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に基づく教育研究にも携わる。フランス語を中心に、ヨーロッパ文化関連科目を担当。2016 年度からはドイツ語のバウマン教授とコンビを組み、ドイツ語・フランス語を同時に学べる「複言語」の授業を開講。

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このTopicsに関する講義

  • 世界の食文化
  • 国際文化論
  • 比較文化論
  • 日本文化
  • サブカルチャー論
  • 表象文化論 etc

アフリカに住む人々は、
“スーパーマルチリンガル”だった。

皆さんはスワヒリ語という言語を知っているだろうか? 現在、アフリカのケニアやタンザニアなど数か国で公用語として使用されているスワヒリ語は、9世紀以降、東アフリカ海岸地域の人々と、インド洋を越えてやってきたアラブ人やペルシャ人との交易の過程で発達した言語だ。タンザニアには120 以上の民族が居住し、それぞれ異なる言語体系を持っているが、そこに住む人々は母語である民族語とスワヒリ語をごく自然に解し、状況に応じて使い分け、都市部にはさらに英語を話せる人もおり、マルチリンガルな人々といえる。

もちろん、皆さんの目的が言語を学ぶこと自体であっても一向に構わない。しかし、言語を学ぶことを通じて、皆さんは、その言語を使用する国々の歴史や文化、人々の日々の暮らしへの関心を持ち、「もっと知りたい」と考えるようになるかもしれない。そう考えたとき、相手の国の人たちとの対話は、通訳を介して行うより、相手の用いる言語によって直接行った方がはるかに得るものが多いと思う。自分の話すたどたどしい外国語によって、相手と意思の疎通に成功したときの「通じた!」という感動は、何物にも代えがたい学びの喜びである。さらに、「言葉を話せる」ということで相手との壁がなくなり、より深く、詳しく、率直なコミュニケーションが実現するようになる。

また、複数の国の言語を学ぶことは、発想の枠が広がることにつながる。皆さんにはぜひ、多くの引き出しを持つことで、懐が深く、話の面白い、魅力あふれるマルチリンガルな人材を目指してほしい。

写真の解説:
タンザニア北部に暮らす狩猟採集民ハッツァの女性たちが、NGOが出版した自分たちの写真集を眺めながら、あれこれと感想を言い合っている。彼女たちは母語であるハッツァ語と、タンザニアの公用語であるスワヒリ語を話す。

八塚 春名 助教

大学院生時代にアフリカのタンザニアへフィールドワークのため長期滞在し、サンダウェという人々に出会う。以後、サンダウェ人の生業活動と自然資源利用や、狩猟採集民であるハッツァ人の民族観光の研究をライフワークとし、現在もほぼ毎年現地を訪れており、ホームステイ先の一家とは家族同然の関係にある。2014年4月から日本大学国際関係学部助教として勤務し、2015年4月からスワヒリ語も教えている。

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このTopicsに関する講義

  • 異文化コミュニケーション論
  • 現代言語学
  • 特定言語
  • 複言語
  • 世界の言語
  • 地域研究 etc