図書館所蔵 上田彦次郎ガラス乾板 デジタルアーカイブ
日本大学図書館国際関係学部分館で所蔵する約2,000点のガラス乾板は、
上田氏が昭和20年代から30年代、伊豆地域を中心に撮影した絵はがき製作用の風景写真。
同氏がパイオニアとして伊豆地域の観光振興に尽くした足跡を見ることができる。
上田彦次郎氏(1901-1984)プロフィール
上田彦次郎(号は春耕(しゅんこう))は明治34年2月12日に田方郡下狩野村(現在の伊豆市)の上田家に農家の次男として生まれる。三島田町にあった大門堂写真館で写真術を学んでいたが、見合い写真撮影などに明け暮れる日常にあきたらず、大正9年、19歳の時に東京に出、芝区愛宕町(現在の新橋)にあった絵はがき製造・販売の日新社に入社。全国の観光地を駆け巡って名所を撮影しては絵はがきの注文を取り、売りさばいた。その後、大正15年に独立して、上田春耕社を興す。
独立する前の大正末期、熱海の観光業者から新趣向の絵はがきを作ってほしいと依頼を受け、当時の川柳の第一人者・井上剣花坊(けんかぼう)の川柳と谷脇素文(そぶん)の漫画に、上田の撮影した写真を組み合わせて、川柳絵はがきを製作した。熱海のものと伊豆一般の二種類を作ったが、その独特の温泉情緒が受けて、よく売れたようだ。
富士山の撮影に一生を捧げた写真家岡田紅陽(こうよう)が昭和15年に富士写真協会を創設した頃から、それぞれの家が空襲で焼けてしまうまでの間、岡田と上田は同じ芝区内に居住し、互いの家を頻繁に行き来するなど親密な交流を持っていた。また、岡田が富士写真協会の分身として立ち上げた日本観光写真連盟の中心メンバーの一人としても活躍した。
戦後は伊豆の国立公園編入(昭和30年)、伊豆急行線の開通(昭和36年)を受けて伊豆の観光が隆盛期を迎えるや、上田の撮影行脚にも熱が入った。伊豆から見える富士山をモチーフにした写真も多く見られる。上田の製作したものは、観光絵はがきの他に、名所の写真をあしらった栞しおり、観光パンフレット、堀内天てんれい嶺画『日蓮大聖人絵巻』、『修禅寺物語』、『唐人お吉物語一代記』の絵はがきや冊子がある。晩年は故郷の修善寺に戻り、絵はがき関係の仕事を続けるが、昭和59年5月22日、満83歳で没する。
日本大学図書館国際関係学部分館で所蔵する約2000点のガラス乾板は、上田が昭和20年代から30年代、伊豆地域を中心に撮影した絵はがき製作用の風景写真。彼がパイオニアとして伊豆地域の観光振興に尽くした足跡を見ることができる。
ガラス乾板について
▼各項目をクリックすると詳細情報が展開されて表示されます
絵はがき製作者・上田彦次郎は伊豆地域を中心とした約2000枚のガラス乾板写真(絵はがき原板)を遺しましたが、その価値を理解していたご子息の上田英男氏は、これを地域振興に役立てようと、伊豆物語半島協会という団体を立ち上げました。
縁あって、平成20年2月、同氏は当時の富士常葉大学准教授大久保あかね氏や東海大学教授高月義照氏並びに日本大学国際関係学部長・教授佐藤三武朗氏らと相談する機会を得、大久保氏と特定非営利活動法人 伊豆地域振興研究所にガラス乾板のデジタル化とその利用方法の検討を託しました。
印画紙に焼かれた写真がなく、またガラス乾板自体はネガであったため、内容を知るには印画紙に焼くか、スキャンしてデジタル化(電子画像化)するしかありませんでした。そこで、伊豆地域振興研究所理事で日本大学短期大学部教授(ビジネス教養学科)宮川幸司氏にデジタル化が委ねられ、平成20年12月には全ガラス乾板のデジタル化と、個々のガラス乾板を収納していた箱毎の分類作業が完了しました。しかし誠に残念なことに、上田英男氏はでき上がった画像を見ることなく、同年5月に急逝されました。
いつ、どこで撮影されたものかこうしてガラス乾板がデジタル化されましたが、収納箱に残された簡単な地名等のほかに個々の撮影場所と撮影時期についての記録は一切見当たらず、いつ、どこで撮影されたものか特定することは困難でした。
公開に向けての調査その後、上田氏の遺志を実現するには相応の時間がかかる上、資料を永く保管する必要があると判断されることから、平成23年、ガラス乾板は画像データと共に日本大学国際関係学部図書館に寄贈されました。
大学としては、昭和の伊豆や箱根等が記録された貴重な資料を調査し、地域振興に役立てるべく、平成24年、学内外の有識者からなる調査・公開ワーキンググループを作り、組織的な調査活動を開始しました。その結果、徐々に撮影場所や時期等が明らかになっていきました。
平成24年11月には、「昭和30年頃の伊豆・箱根 伊豆修善寺出身の写真家上田彦次郎ガラス乾板写真展」と題し、風景写真46点を公開する初の展示会が大学内で開催されました。その後も、伊豆の国市韮山郷土史料館、三島信用金庫・さんしんギャラリー善、伊豆箱根鉄道駿豆線車内等でも展示会を行ってまいりました。
また、平成26年7月には特定非営利活動法人伊豆地域振興研究所が主体となり、アンドロイド・スマホ用アプリ「伊豆・箱根の懐かしい風景 昭和20~30年代の古写真と巡る」を無料公開しました。
そして、平成27年3月には、静岡新聞社より『上田彦次郎ガラス乾板写真 昭和30年ごろの伊豆と富士山』と題する写真集を発刊いたしました。
上田彦次郎が暗箱型カメラでの撮影に使用したガラス乾板は主にオリエンタル写真工業株式会社、富士写真フイルム株式会社(以下富士フイルム)、小西六写真工業株式会社の製品であった。ガラス乾板は透明なガラスの板に感光乳剤を塗布し乾燥させたもので、フィルムが一般化する前、明治から昭和にかけて普及していた。ちなみに、富士フイルムではフィルムを使ったロールフイルムが販売されるようになった後も昭和47年までガラス乾板の製造を続けていた。ガラスの大きさは12cm×16.5cmで、厚みは1mm ほどあるためフイルム製品に比べて重い、壊れやすいなどの欠点もあったが、平面性に優れ、解像度も高いので、大判写真の撮影に適していた。
「上田彦次郎ガラス乾板デジタルアーカイブ」は、日本大学図書館国際関係学部分館が所蔵する上田彦次郎氏の遺作、ガラス乾板約2000枚をスキャンして画像化したデータベースからその一部を厳選して公開するものです。
本デジタルアーカイブの利用にあたっては、サイト規約を遵守してください。
使用した画像の特徴と操作方法
絵はがきという出版物の性格上、撮影時期が特定できる要素は極力排して製作されているため、断定的な時期の特定は困難です。しかしながら、ガラス乾板が撮影された時期は概ね昭和20年代後半から昭和30年代後半に集中しているものと考えられます。
この画面の下にある画像サムネール又はタイトルをクリックすると、各画像の詳細ページに移動します。さらに、各画像下のサムネール画像(左から1「ガラス乾板」、2「現在の写真」、3「絵はがき等」)のいずれかをクリックすると次のように表示さます。ただし、該当する画像がない場合は「NO IMAGE」と表示されます。
- 「ガラス乾板」
ガラス乾板に記録されたモノクロ画像を表示します。
なお、この写真はガラス乾板を透過型スキャナーによりデジタル化した後、Webでの表示用(低解像度)に加工したものです。また、ガラス乾板の経年劣化により画像に筋や点状の傷、あるいは画像部分のガラス面からの剥離が起こっている画像もあり、その損傷の度合いは様々ですが、敢えて修整は行っていません。 - 「現在の写真」
上田彦次郎が撮影したと思われる場所と可能な限り近い地点から現在の様子を撮影したカラー画像を表示します。 - 「絵はがき等」
上田春耕社が製作した絵はがき等で原版と一致するもの、又は関連画像を表示します。 - 「Google map」
画面最下部には当該写真のおよその撮影地点と撮影方向等をGoogle map上に示しています。適宜、拡大・縮小又はドラッグすることによって撮影地を確認することができます。また、画面左下の航空写真のアイコンをクリックすると上空からの画像も見ることができます。
Google map利用上の注意
Google mapの利用に際しては一定の制限があります。詳しくはGoogle mapの地図右下にある利用規約(外部サイトに移動します)を参照してください。
(免責事項)
もし、地図上の場所を訪ねる場合は、撮影地点によっては、私有地となっていて許可なく立ち入ることができない場所や、草木が生い茂っていて視界が確保できないばかりか、立ち入ること自体危険な場所がありますので、そのような場所に立ち入ることは絶対に避けてください。万一そうした場所に立ち入ることによって生じる損害について、日本大学国際関係学部は一切責任を負うものではありませんのでご了承ください。
オリジナル資料について
オリジナル資料については、日本大学図書館国際関係学部分館に所蔵されていますが、資料保存の観点から一般の閲覧はできません。利用に際しては本サイトのデジタル画像をご利用ください。
本サイト以外に下記のアンドロイド・スマートホン用アプリや書籍についてもご利用ください。
- アンドロイド・スマートホン用無料アプリ「伊豆・箱根の懐かしい風景 昭和20~30年代の古写真と巡る~」(外部サイトに移動します)特定非営利活動法人伊豆地域振興研究所製作(iOSには対応しておりません。)
- 絵はがき写真家、上田彦次郎が遺した約2000点のガラス乾板(本図書館所蔵)から厳選した写真150点を収録した写真資料集
書名 上田彦次郎ガラス乾板写真 ~昭和30年ごろの伊豆と富士山~ 判型 B5判横 152頁 発行日 2015年3月29日 編者 日本大学国際関係学部図書館 発行 株式会社静岡新聞社 定価 1600円+税(1,728円) ISBN 9784783809494 - 写真編(モノクロ写真150点)
沼津・狩野川、韮山、伊豆長岡、大仁、修善寺、達磨山、嵯峨沢温泉、吉奈温泉、湯ヶ島、河津、峰温泉、函南(畑毛温泉)、熱海、網代、伊東、熱川、片瀬・白田、稲取、下田、南伊豆、西伊豆、土肥、沼津・内浦、三島、山梨(忍野村)、箱根、東京 - 資料編
撮影場所の今昔/上田春耕社製着色絵はがき/上田の写真を基に製作された絵はがき、タトウ、しおり/写真公開に至るまでの経緯/上田彦次郎(1901-1984)プロフィール/上田彦次郎と岡田紅陽との交流/昭和の旅館の変遷/上田春耕社の絵はがき等出版物一覧/主要参考文献
- 写真編(モノクロ写真150点)
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堂ヶ島御乗浜
賀茂郡 西伊豆町 仁科 堂ヶ島 御乗浜
堂ヶ島
賀茂郡 西伊豆町 仁科 堂ヶ島
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賀茂郡 南伊豆町 下賀茂
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下田市 下田公園
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下田市 下田公園 馬場ヶ崎展望台
下田市 和歌の浦
下田市 下田公園 お茶ヶ崎展望台
下田 犬走島と雁島
下田市
下田 了仙寺山門
下田市
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下田市 下田港
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賀茂郡 東伊豆町 片瀬
片瀬海岸を走る乗合いバス
賀茂郡 東伊豆町 片瀬
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賀茂郡 東伊豆町 片瀬
片瀬温泉
賀茂郡 東伊豆町 片瀬
熱川温泉全景
賀茂郡 東伊豆町 奈良本
熱川温泉全景(北側)
賀茂郡 東伊豆町 奈良本
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賀茂郡 東伊豆町 奈良本
熱川温泉熱川橋
賀茂郡 東伊豆町 奈良本
熱川温泉 熱川バナナワニ園
賀茂郡 東伊豆町 奈良本
魚見崎から見た熱海湯泉街
熱海市
熱海梅園で記念撮影
熱海市 梅園町 梅園
下田への途 峠より天城連山を望む
伊豆市湯ヶ島と賀茂郡河津町の境 向峠
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国立公園伊豆・湯ヶ島温泉霧の天城路を八丁池へ
伊豆市 湯ケ島 天城路
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伊豆市
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伊豆市 修善寺 修善寺温泉
達磨山から見た富士
伊豆市 大沢 達磨山
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伊豆の国市 大仁 大仁商店街仲通
伊豆大仁 狩野川の舟橋
伊豆の国市 大仁
城山と富士山
伊豆の国市 大仁 旧大仁ホテル
東洋醸造大仁工場 力正宗
伊豆の国市 三福
伊豆大仁全景
伊豆の国市 大仁
伊豆長岡温泉
伊豆の国市 長岡 伊豆長岡温泉
伊豆長岡温泉 温泉場通り
伊豆の国市 長岡 伊豆長岡温泉
守山から古奈温泉を望む
伊豆の国市 守山
伊豆長岡 狩野川に架かる千歳橋
伊豆の国市
反射炉と韮山城趾の富士
伊豆の国市 韮山 韮山城趾
韮山 江川邸正面
伊豆の国市 韮山 江川邸
畑毛温泉大仙山の富士
田方郡 函南町 畑毛 大仙山
畑毛温泉遠景 富士山を望む
伊豆の国市 奈古谷 畑毛温泉
柏谷の横穴群
田方郡 函南町 柏谷 柏谷の百穴
箱根西麓から見た富士山
三島市 箱根西麓 三谷新田
箱根山麓・箱根・芦ノ湖エリア
大観山からの箱根芦ノ湖と富士
箱根 足柄下郡 湯河原町
芦ノ湖 元箱根
箱根 足柄下郡 箱根町 元箱根
芦ノ湖遊覧船乗場
箱根 足柄下郡 箱根町小涌谷湖尻 芦ノ湖遊覧船湖尻港
大涌谷より富士の大観
箱根 足柄下郡 箱根町 大涌谷
参考資料
- 『新観光地図 伊豆半島』 日本交通公社 昭和28年11月25日
- 『伊豆半島 アサヒ写真ブック104』 朝日新聞社 昭和35年
- 「また貴重な剣花坊資料発見 観光の川柳絵ハガキ 剣花坊の句に素文漫画」
『伊豆新聞』 昭和50年10月24日(下田版) - 「“川柳絵ハガキは私が作った” 観光PRのハシリ 人気者の剣花坊を活用 上田さん(修善寺)が名乗り」
『伊豆新聞』 昭和50年10月29日(下田版) - 「一枚の絵はがきをめぐって旧い絵はがきが語る下田の観光50年」
『月刊伊豆再発見 創刊三号(1976. №3)』 メグ出版 昭和51年3月31日 - 平井和子『西伊豆・土肥の女たち -聞き書きによる掘り起こし-』 伊豆郷土史研究会 昭和60年
- 『写真集 静岡県の絵はがき』 羽衣出版有限会社 平成5年
- 「達磨山の開発」『修善寺の栞』 修善寺町 平成8年3月 P.15-16
- 『佐藤眞一『続・絵はがき -伊東百景-』 伊東市立伊東図書館 平成13年 P.93-105
- 『シリーズ・本を残す(10) 写真資料の保存』 社団法人日本図書館協会 平成15年
- 「80年前の斬新なPR 戦略 温泉情緒誕生まで 川柳漫画入り観光絵はがき」『熱海新聞』 平成19年2月10日
- 『増補 港区近代沿革図集 新橋・愛宕・虎ノ門・芝公園・芝大門・浜松町・海岸』 港区立郷土資料館 平成21年
- NPO法人伊豆学研究会 伊豆大事典刊行委員会代表 橋本敬之編『伊豆大事典』 羽衣出版 平成22年
- 『伊豆学叢書6 伊豆の古写真集』 特定非営利活動法人伊豆学研究会 平成25年